DSAのデザイン保護の考え方

DSAが考えるデザイン保護のビジョン

■空間デザイン協会の今

今年、一般社団法人日本空間デザイン協会(DSA)はディスプレイデザイン協会(DDA)から、新たな協会名とともに新たな一歩を踏み出しました。
1959年、1963年に前身となる任意団体が大阪と東京でそれぞれ誕生しました。ディスプレイデザインのメルクマールとなったのは1970年の日本万国博覧会です。あらたな環境演出、空間創造が次々と試みられ、ディスプレイが総合的な空間・環境の創出する業種へと進展する起爆剤になったと同時に社会の中に開花する役割を果たしました。
そして時代とともにメディアの多様化、情報技術やその融合化そして人々のライスタイルが変化し、広義の空間そのもののデザインとコミュニケーションの創造活動と広がり続けています。そしてその実態にそってデザイナーだけでなく、プロデューサー、クリエーター、プランナー、アートディレクター、設計者、エンジニア、演出家、照明家、芸術家、教育者、研究者など様々な分野の専門家により構成される協会としてその担うべき姿を変容させています。

■空間デザイン領域におけるデザイン保護の意識

前述の通り、関与するステークホルダーも複雑で、創作者(含法人)の主観的判断だけでは、独創性、非類似性を見極めることは非常に困難です。多くの空間デザインでは純粋に無からの創造だけでなく、多種多様な既存の創作物も含まれた要素を再構成し、演出された総合創作物という概念があるため、それを見極める為のリテラシー、例えば全体デザインの中での切り取り方や規定の仕方が重要になってきます。法的権利の出願申請もこのような事情があり、当業界にとって知財は敬遠されがちというのが現状です。(注:現在特許庁では空間デザインの意匠登録出願における図面の様式:提出要件の簡素化・多様化等の検討段階に入っています。)

そのような理由もひとつとしてあり、空間デザインに携わる人々のデザイン保護の意識も関心も低いことは事実です。例えば、技術が絡むパッケージデザイン、工業デザインなどは企業自身がそれらを知的財産としてとらえ法的保護対象を視野に入れています。しかし一部の空間デザインでは極端にいえばセールスプロモーションの一端で、仮設一過性なものとしてその必要性を感じないというのがクライアント(企業)の認識です。一過性であることとデザイン保護に値しないことは比例することではないのですが、これまでの商習慣から生じた業界の常識は創作者側も簡単に覆すことも難しいという背景があります。

■D8創作証への取り組み

そこで、日本空間デザイン協会では、知財権に関連した研究委員会を分科会として発足させ、D8の創作証をデザイン保護の啓発や空間デザインの技術・品質向上を目的に活用、活動することを検討しています。複合要素のデザイン創作物のため主観的判断では、偶発的に酷似したデザインに創作証を添付してしまう可能性もあり、それが反対に創作証のオーソリティを毀損することになります。そのため、創作者がデザインの独自性を見極めるのではなく、むしろ客観的に判断できるコミッティー(例えば当協会や当委員会)で、オーソライズする方向や機会を模索している最中です。いくつかの事例を紹介することにより、デザイン価値の独自性や新奇性などを主張する視点をもつことや、自身のデザインに対して見つめるきっかけになることを期待しています。