% Arabica Riyadh the Zone

色と影のないカフェ

渡辺 淳乃村工藝社 no.10

% Arabica Riyadh the Zone
店内からエントランスを見た写真です。色彩豊かな中庭とのコントラストが際立つカットです。

応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください

このお店はリヤドの商業施設The Zoneにオープンした、%ARABICAのサウジアラビア第一号店です。
The Zoneには色鮮やかな植栽が植えられた中庭があり、昼間は強い日差しがそれらに当たり濃い影を落としていました。
%ARABICAらしいミニマルさを追求しながら、周囲の環境と相反する店舗とすることで、サウジアラビアに%ARABICAが初出店したことを強くアピールしようと考えました。
そして、色と影を無くした空間を作ることに取り組みました。
光床は影を無くすための最も効果的な仕組みであり、さらに店内を徹底的に白に仕上げることで、%ARABICAの商材だけがしっかりと浮き立つ仕掛けにしています。
この店舗は入口から焙煎ルームまで円形のアーチを連続させており、これは伝統的なイスラムの建築のアーチを抽象化したものです。さらに壁面のミラーがモスクの回廊のように無限に続くアーチを作り出しています。
現地の人々が普段から目にしている要素を取り入れたのは、このお店を慣れ親しんだ場所のような親近感をもって利用して頂きたいという思いからです。
初めて経験する%ARABICAのこだわりのコーヒーとともに、この空間で特別な時間を楽しんで頂けることを願っています。

施工中の写真です。コロナ禍であったため、写真とオンラインミーティングで工事状況の確認をしました
施工中の写真です。コロナ禍であったため、写真とオンラインミーティングで工事状況の確認をしました

Question01

受賞作品の最後のピース(ジグソーパズルを仕上げるに例えて)はどこでしたか?

アーチに仕込んだ間接照明です。この照明によってアーチが強調されてメリハリのある空間になり、またミラーの際にできる影を無くす役割も果たしています。そして、光床だけでなく、壁や天井付近に光のラインが入ることで全体の照明のバランスも良くなりました。

Question02

空間デザインの仕事の中で、一番好きな事は?

デザインを始める最初の段階です。具体的にはコンセプトワークと平面図を作成している時です。担当するプロジェクトの特徴や、区画に与えられた条件を整理して、いかにシンプルに心地よい空間に纏め上げられるか、試行錯誤している時が一番楽しいです。

Question03

空間デザインの仕事の中で、一番嫌な事は?

クライアントから求められている与件が、誰がやっても変わらないのではないかなと思ってしまった瞬間はあまり楽しくないです。ただ、そういった時も何かこのプロジェクトに相応しいオリジナリティのある提案ができるのではないか、と考えてしまうので、最終的には楽しんで組んでいるようにも思います。

Question04

コロナ禍でのデザインの果たすべき役割とは?

コロナ禍といっても、人々の生活様式は少しずつ変化をしているため、竣工後の生活様式を想像しながら、人々の生活を少しでも豊かにすることがデザインの役割であると考えています。

Question05

リアルとバーチャルを融合させる空間デザインとは?

今の技術ベースでは、“バーチャルの制限のない視覚体験“と”リアルの視覚以外の五感の体験“をミックスしたいいとこ取りができると、各々の良さを生かした空間デザインができるのではないかと考えます。

Question06

空間デザインで社会に伝えたいコトは?

全身で体験することで得られる感動や心地よさは、視覚や聴覚だけでは得られないことを多くの人が認識していると思いますが、近年は様々な情報が簡単に手に入ってしまうため、そういった感覚が少しずつ薄れていってしまっているのではないかと危惧しています。五感で場を味わうことの価値を空間デザインを通じて伝えていけたらと考えています。

Question07

空間デザインの多様性について一言

空間デザインはもっと多様になって良いと考えています。機能性や効率だけを重視しすぎてしまうと、似たような空間ができてしまいまい、その場所に行く理由がなくなってしまいます。デザイナーがその場所にあるべきオリジナルの空間を作り出すことで、その空間にいくべき無二の価値が生まれてくると考えています。

Question08

空間デザイナーを目指す人へのメッセージ

空間デザインは、他のデザインの仕事と同様にそれなりに大変な仕事ではあります。しかし、デザイナーによっても違うとは思いますが楽しい側面もいっぱいあります。
私の場合は、クライアントによってプロジェクトの与件が変わるため、毎回新鮮な気持ちで仕事に取り組めること、また比較的関係者も多いので様々な人と知り合うことができることもこの仕事が楽しい理由の一つです。
出来上がった後にはそこに訪れているお客さんの反応などが間近に見ることのできるという意味でも、面白い仕事であると感じています。

PROFILE

渡辺 淳

渡辺 淳

乃村工藝社 no.10

1984 横浜生まれ
幼少期をアメリカで過ごす。
2011 東京藝術大学大学院美術研究科 修了。乃村工藝社入社

受賞歴
2022 JCD・DSA 日本空間デザイン賞2022 - 銀賞受賞
2019 JCD・DSA 日本空間デザイン賞2019 - 銅賞受賞
2018 DSA 日本空間デザイン賞 - 銀賞受賞