JRE Local Hub 燕三条 / 燕三条こうばの窓口

燕三条地域の技術や人々をエリアや世代を超えてつなぐ地方創生型ワークプレイス

林 洋介14sd / Fourteen stones design

JRE Local Hub 燕三条 / 燕三条こうばの窓口

応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください

地方創生型ワークプレイス『JRE Local Hub』は、「JR東日本」が掲げる「地方を豊かに」を実現するため、燕三条地域の技術や人々をエリアや世代を 超えてつなぎ、地域の産業や人材を育成する事業であり、最初の施設が燕 三条駅に開業しました。施設内には地場企業である「ドッツアンドラインズ」 が運営する「燕三条こうばの窓口」が併設しており、ものづくりコンシェルジュが常駐し、地域に点在する10以上の工場とのビジネスマッチングを行い企業の商品開発をサポートする。また、地元自治体三条市や各工場と連携した教育プログラムを開催して産業振興や雇用創出に貢献することを目的にした施設である。

新潟県燕三条地域は、金属加工を中心に多数の工場が集積したものづくりのまちで、上越新幹線燕三条駅を玄関口として国内外から多くのビジネス マンが商談に訪れる。多くの工場は大手メーカーの三次、四次の下請けとして、裁断、プレス、磨きなど単一工程に分業して存在し、地域全体で製品 を製造する体制を構築しているが、高い製造技術を持ちながら製品付加価 値が低く、慢性的に労働力は不足し、後継ぎも不在で廃業する事業者が増 えている状況があった。そのような中、地元の無人駅「帯織駅」に拠点を 構える地場企業「ドッツアンドラインズ」は、新たにものづくりを検討する 企業からの依頼に対して、多数の協力工場と連携して地域を一つの工場と して見立て、その製品開発をサポートするコンシェルジュビジネスを展開していた。JR 東日本の目指す地方創生へのビジョンとドッツアンドラインズの ビジネスが合わさることで新しい価値を想像し上記の課題解決の糸口になると考えた。

燕三条地域のものづくりの技術を通じて地域をつなぎ、人材育成を通じて世代をつなぐ、地域課題解決拠点として、象徴的な空間デザインが求められた。駅直結型という立地において、コワーキングスペース機能と、ものづくりや観光の相談窓口としての機能の2つがバラバラでなく一つの統一した 空間コンセプトのもとで認識される必要があると考えた。空間コンセプトは、 燕三条の工場風景から着想を得たデザインである。スレート波板、ローラー コンベア、ビニールカーテンなどを用い、什器や内装の金属部分は全て地 元の工場と協力して制作した。

また燕三条ではこれまでに、地域の工場を開放し、製造現場をそのままお客様に体感していただく工場見学のイベントである「燕三条工場の祭典」を 2013 年から10年間続けており、芸術祭のように、地図を片手に各自が思い思いに興味のある KOUBA をめぐる というもので国内外から高い評価を得ている。ドッツアンドラインズはこの イベントにおいても積極的に関わり続けてきた経験があり、そうした経験が 本施設内の「燕三条こうばの窓口」にも活かされている。駅内にあることから、BtoB だけでなくBtoC にとっての窓口ともなるような、工場見学や観 光案内の相談にも対応していきたいという動機やビジョンが明確であった。本施設において様々なビジネスマッチングが生まれ、この地域の新しい魅力を訪れる観光客に伝えることができるだろう。

解体後の様子。この場所は以前は駅の旅行商品を売る「びゅうプラザ」の窓口とオフィスの跡地を利用している。
解体後の様子。この場所は以前は駅の旅行商品を売る「びゅうプラザ」の窓口とオフィスの跡地を利用している。

Question01

受賞作品の最後のピース(ジグソーパズルを仕上げるに例えて)はどこでしたか?

その空間に多くの利用者が訪れること。
あるいは、受付スペースのカウンター内に置かれた燕三条の製品や、
受付スペースに登録企業カードの棚があり、その棚がいっぱいになること。

Question02

空間デザインの仕事の中で、一番好きな事は?

空間デザインの仕事とは、クライアントの想いや、その製品やサービスの発する声に耳を傾け
そこに内在している価値や新しい魅力の源泉を発見し、そのプロジェクトの
もっとも本質的だと思えるあるべき姿を探していくこと。

Question03

空間デザインの仕事の中で、一番嫌な事は?

特にありません。

Question04

クライアントとのやり取りで印象的に残っている言葉や事はありますか?

どのクライアントも、直接会話をすることはとても大切ですが、私たちの仕事は
語っていないさまざまな声にも想像力を働かせなくはならないと思います。
その空間で扱う商品の声、お店のある場所や周辺の環境の発する声、そこを訪れるであろうお客さんの声など。


Question05

受賞作品においてコロナの影響はありましたか?

大枠での施設自体のスケジュールなどに影響はなかったが、
おそらく施工やその制作、素材調達、価格高騰など細かな面での影響は数々あったであろうと思います。

Question06

空間デザインで社会に伝えたいコトは?

社会というとやや大きくてイメージが難しいのですが、
自分が関わる店舗のデザインにおいては、お店ができたことでその地域や
生活に何かしらかの影響を与えることができるということです。
お店がその地域に良い影響をもたらすお手伝いを空間デザインで
できたらとても嬉しい事です。
小さな変革かもしれませんが、そうした可能性が空間デザインという仕事にはあると思います。
そしてそれは間違いなく社会に繋がっていることだと思います。

Question07

空間デザインの多様性について一言

多様性でいうと商業デザインにおいていえば、ビジネスモデルが
時代や人々の生活やニーズと合わなくなってきているように思います。
不動産として家賃を払ってお店を運営するというあたりまえの
仕組みを一度疑ってみてもよいのではと思います。
例えば順番を変えて、まず家賃などお金ではなく、社会にある空間ストックをもっと自由に活用する多様な仕組みが生まれたらと妄想します。

いろいろな実験が生まれるはずで、そうした実験が多く繰り返されることで
より時代に必要な新しい空間のあり方や機能、価値が生まれてくるはずです。
多様な空間デザインもそれに伴い新しく生まれるのだと思います。

Question08

空間デザイナーを目指す人へのメッセージ

人が集う空間の意味や意義が問われている時代だと
感じています。経済の停滞に加え、ネットによる
サービスの進化も著しく、そうした生活を取り巻く
生活環境の変化に伴い、人と人、人とモノやコトのコミュニケーションの
あり方や、時間への意識もより多様になってきています。
そうした時代のなかにおいて、いまどのような空間が求められるのか、
そしてそこにデザイナーがどう介在する余地があるのか。

リアルに存在する空間デザインというものが人々や社会にとって
必要だと思えるようなな場とはどんなものかと日々考え続けながら
仕事をしています。
空間デザイナーを目指す若い人が、同じような想いを感じながらも
逞しく前進し、この仕事に希望や新しい価値を生み出してくれる
ことを願っています。

PROFILE

林 洋介

林 洋介

14sd / Fourteen stones design

1976年生まれ。
2001年「14sd / Fourteen stones design」設立。
インテリアデザイン、会場構成、グラフィックデザイン、プロダクトデ ザインなど様々なジャンルのデザインを行うデザインスタジオ。何気ない日常から生まれる感覚を大切に、デザインに常に新鮮な補助線を引くような新しいデザインのあり方を発信している。

主な受賞歴に JCD DESIGN AWARD 大賞、日本空間デザイン賞 金賞、 if DESIGN AWARD 、GOOD DESIGN AWARD BEST100 他多数。
主な仕事に、嗜好品研究所の各店舗(OMOTESANDO KOFFEE, KOFFEE MAMEYA, KOFFEE MAMEYA-Kakeru-)、吉田カバン各店舗(PORTER, PORTER STAND, PORTER EXCHANGE, POTR, CLOAK ROOM by PORTER 業態他)、中川政七商店 分店業態店舗など。