Culvert Park

土木・建築領域を横断し、まちづくりのコミュニティを顕在化する空間デザイン

伊藤孝紀タイプ・エービー

Culvert Park

応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください

クライアントは、愛知県蟹江町に本社をおく建設会社です。建築・土木工事に加え、ビオトープや環境学習をおこなうなど、積極的に地域へと働きかける活動をおこなっています。創業110周年を記念して創業地に、記念碑や記念館のような建築をつくりたいという相談がありました。しかし視点と思考を変えて、土木の技術力や魅力を伝え、地域に親しまれる建築をつくることを提案しました。言うなれば、まちづくりの拠点となるように、地域コミュニティを顕在化させる空間デザインです。
そこで、子育て世代の主婦層を中心に、WSをおこない、地域に求められている機能を整理しました。子ども達に思う存分、砂場や芝生など身体を使って遊ばさせたいという要望に加え、集うことができるカフェのような空間、家事の一助となるランドリーやパンの販売などの機能が望まれました。これらに加え、多目的スペースや建設会社のサテライトオフィスとしての役割も担っています。幾つかの要素が、混じり合い、領域を横断するような骨格が生まれ、それを実現するための具体的な空間デザインを模索しました。
目指したのは、「多中心がある建築」です。生物が生息する場「ECO-STACK(エコスタック)」に着目し、土木資材である「ボックスカルバート」を用いて、多様な生物が共生する生息環境をモチーフに、さまざまな人間のふるまいと営みの場をつくり上げました。
また、通常は地中に埋まっている「ボックスカルバート」を顕在化させることで、土木がもつ圧倒的なスケール感と建築スケールの「ズレ」を生み出すことがねらいです。「ズレ」によって生じた隙間には、親子連れや高齢者の集い、働く人と休息に来る人、それぞれが主人公となれる居場所を介在させる試みです。
もう一つ挑戦したのは、「マチとヒト」「土木と建築」「屋外や屋内」「大人と子ども」「働くと休息」「集うと佇む」のように二項対立や境界を、コミュニティの力で融解することができないか。それはwith/after コロナで気づかれた、店舗(民地)の賑わいが軒先から歩道や公園(公地)に滲み出す、まちづくりの空間(ウォーカブル推進)のような関係性でしょうか。いうなれば、コミュニティを媒介にすることによって、‘土木環境’を建築空間に、建築空間を‘人間の営み’に転化する挑戦でもあります。

使い手の視線で綴る映像表現
建築家やデザイナーの視点から空間デザインのコンセプトを伝えるのではなく、使い手のアクティビティやコミュニティが共有できる映像制作をお願いしました。ある意味、この空間デザインで取り組みたかった結果を、端的に解説した映像になっていると思います。
撮影及び映像制作:トロロスタジオ

Question01

受賞作品の最後のピース(ジグソーパズルを仕上げるに例えて)はどこでしたか?

利用していただく人々です。

Question02

空間デザインの仕事の中で、一番好きな事は?

誰かの想いや希望を、空間のデザインに落とし込む瞬間です。

Question03

空間デザインの仕事の中で、一番嫌な事は?

特にありません。厳しい与条件がある方が燃えるので(笑)

Question04

コロナ禍でのデザインの果たすべき役割とは?

新しいライフスタイルや価値観の変化に、先んじて提案することです。

Question05

リアルとバーチャルを融合させる空間デザインとは?

五感への作用や体験価値をリアルとするなら、それらを高める手法がバーチャルと捉えています。

Question06

空間デザインで社会に伝えたいコトは?

空間デザインは、まちづくりとの連動や繋がること、解決策や潤滑油となる可能性です。

Question07

空間デザインの多様性について一言

空間デザインの表現が多様になっても、根源は変わらないということです。

Question08

空間デザイナーを目指す人へのメッセージ

クライアントの要望を実現することに加え、まちづくりに寄与しているか、常に自問自答することでしょうか。

PROFILE

伊藤孝紀

伊藤孝紀

タイプ・エービー

名古屋工業大学大学院 建築・デザイン分野 准教授
有限会社 タイプ・エービー 主宰

1974年 三重県桑名市生まれ
1994年 TYPE A/B設立(2005年 有限会社タイプ・エービーに改組)
1997年 名城大学理工学部建築学科卒業
2000年 北山創造研究所
2007年 名古屋市立大学大学院芸術工学研究科博士後期課程満了
同年より名古屋工業大学大学院 准教授・博士(芸術工学)

建築, インテリア, 家具のデザインや市場分析からコンセプトを創造しデザインを活かしたブランド戦略を実践。名古屋圏を中心に, 行政・企業・市民と連携した, まちづくりに従事し, 社会実験など先駆的な活動を牽引している。

2017年 すまいる愛知賞 名古屋市住宅供給公社 理事長賞
2017年 DSA空間デザイン賞 協会特別賞
2018年 ソトノバアワード URBAN DESIGN賞
2018年 愛知まちなみ建築賞
2019年 日本建築学会作品選集
2022年 キッズデザイン賞
2022年 グッドデザイン賞 など多数受賞