大阪避雷針工業神戸営業所
スクラップ&ビルドから、ストック&リジェネレイトへ -既存躯体を地形の一部と捉え、そこに時間性を組み込む-
山崎篤史竹中工務店
応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください
避雷設備を設計・施工する企業の神戸にある営業所の改修計画である。1989年竣工のRC4階建ての既存建物は,倉庫が1・2階にわかれているのが不便で,さらには35年の間に4階の社宅は不要になり,3階の事務室も半分以上が余っていた。そのため1/3程度の規模の2階建てに建て替えたいというのが当初の要望だった。しかし,調査をしてみると内装や設備は更新時期を迎えていたものの,躯体や外装タイルは健全だった。そこで私たちは,大量の廃棄物を出してわざわざ小さく建て替えるのではなく,不要な部分を減築して軽量化し,その分,既存躯体からの跳ね出しだけで基礎を作らず増築する提案をした。これにより倉庫を1階に集約し,事務室と吹抜けでつなぐことで要望をかなえることができた。さらに,今後70年以上ある躯体寿命を全うしてもらうことも重要だと考え,新たに付け足す材料には「経年美化」する素材を選び,ユーザー自身で容易に補修や交換が行えるディテールにするなど,時とともに建築への愛着や価値が増していくよう意図した。
既存躯体を地形と捉え,そこから建築を構想することで,"普通の建物"を長く愛される建築へとつくりかえる。こうした手法が広まれば,建築の寿命と都市の持続性について新たな可能性を示せるのではないかと考えた。
スクラップ&ビルドを超える価値創出を目指し、減築と増築を組合わせた改修にチャレンジしたプロジェクトの紹介動画。
https://www.youtube.com/watch?v=ab30HJ8k_y4
Question01
受賞作品の最後のピース(ジグソーパズルを仕上げるに例えて)はどこでしたか?
このプロジェクトはもともと建替えのご依頼でした。現地調査をしたところ、阪神・淡路大震災を乗り越えた躯体は健全であることが分かり、四隅のコアで10mスパンの梁を支える架構も魅力的に感じました。たった35年でこの建築を壊すのはもったいないと思い、既存建物の魅力を活かす改修方法を探ることにしました。様々な検証を重ね、ご依頼から2か月後に建築主にこの案を提案した際、大変喜んでいただき、一発でGOサインをもらえた瞬間、最後のピースがはまった感覚がありました。
Question02
空間デザインの仕事の中で、一番好きなコト、ワクワクするコトは?
建築は長く使われることが大切だと思っています。そして、長寿命な建築になるには、使う人の愛着が時とともに育まれていくことが欠かせないと考えています。閑谷学校の床が磨かれて黒光りしている様を見ると、人に大切にされた建築は美しいなと感じます。自分がつくった建築に、竣工後時間が経って伺った際、その建築が大切にされているのを感じ、新築よりも魅力的に映る時、すごく嬉しくなります。
Question03
空間デザインの仕事の中で、一番苦労するコトは?
最初にイメージしたものを、実際の建築としてリアライズする過程ではたくさんの苦労があります。特に誰もやったことが無いことにチャレンジする場合はなおさらです。建築はアイデアや言葉だけではつくれないので、苦労は多々ありますが、それを乗り越えてこそ、新しい空間が生まれると信じています
Question04
クライアントとのやり取りで印象的に残っている言葉や出来事はありますか?
改修案に一発でGOを出してもらった際、「新築案とのコスト比較をしましょうか。」と私が言うと、「お金で案を決めたと思われたくないので、コスト比較はしなくていい。それよりも、一日でもこの建築を早く見たい。」と言ってくださいました。私たちの提案がクライアントに響いたことを感じ、非常に印象に残っています。
Question05
空間デザインで社会に伝えたいコトは?
毎年、建築業界から出ているごみの量は、私たちの普段の生活ゴミの量よりもはるかに莫大です。私たち建築家や空間デザイナーはもっと“建築の終わり”に目を向けなければいけないと思っています。そして、本来は作ったものを捨てる事は経済的にも無駄なはずで、人口が減少しつつある社会だからこそ、今、目の前にあるものを活かしながら、より豊かな社会を創造するという観点が必要だと思っています。
Question06
空間デザインの多様性について一言
建築は多数の技術の組み合わせによって成立しているので、新しい技術や素材が出てくればそれだけ空間デザインの可能性が拡がると思います。ただ、建築は長い時間を超えていかなければいけない存在なので、その新しい技術や表現が、ただ単に新しさを目指したものではなく、未来に対して意味があるものにできるのかを私達デザイナー側が意識しなければいけないと思っています。
Question07
空間デザイナーを目指す人々へのメッセージ
AIが進化し、優れたコンセプトやカッコいいパースをつくれるようになっても、実際の建築や空間を作り上げるには、建築家や空間デザイナーが必要とされる部分が残ると思います。そこを見極め、人間でしかつくることが出来ない豊かさとは何かを学び続けることが必要な時代だと思います。
PROFILE

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山崎篤史
竹中工務店
執筆者|山崎篤史
経歴:1982年生まれ。2005年神戸大学工学部建設学科卒業。2007年同大学大学院修士課程修了、同年竹中工務店入社。一級建築士。
受賞歴:日本建築士会連合会建築作品賞優秀賞、芦原義信賞、大阪建築コンクール大阪府知事賞、IDA Design Awards Gold、iF Design Award、DFA Awards Sliver、AMP Awards、JID AWARD 銅賞、グッドデザイン賞、ウッドデザイン賞奨励賞他
写真は5人の設計者|左から許斐健太郎(構造設計)、吉本梨紗(設備設計)、山崎篤史(設計統括)、大石幸奈(建築設計)、村上友規(構造設計)





































