ふじのくに地球環境史ミュージアム 全地球史展
「空間のマスキング」と「情報のマスキング」による展示デザイン
石河 孝浩丹青社
応募作品を空間デザイン的視点で語りつくしてください
地球が生まれた46億年前から、消失するかもしれない80億年後までの126億年の地球史を、岩石を通して伝える展示を考えた。展示室はパンチカーペットを多様に変化させてデザインを構成しているが、「空間のマスキング」と「情報のマスキング」の2つの考え方でパンチカーペットの活用を整理している。
展示室である廃校の教室は、当時のパーケットフローリングが床仕上げ材として、学びの場の記憶をその場に留めている。今回は敢えてパンチカーペットでその全面を覆うこととした。そしてその一部を切り取り、再びパーケットフローリングを表出させてつくり出した場を展示ステージに見立て、そこに岩石を直置きする計画とした。本来であれば、展示をするエリアを何らか設えるのだが、展示しないエリアが設えられた状態になるという逆の発想によるアプローチを試行した。
壁面にもパンチカーペットを貼り、岩石が示す地球史の情報を表示したのだが、パンチカーペットの柔らかさを活かして、情報の一部を隠蔽した表現とした。専門的な分野のテーマなだけに、見えないからこそ興味を刺激する解説づくりを狙った。
「空間のマスキング」と「情報のマスキング」という2つの表現で空間を特徴づけながらも、パンチカーペットを効果的に使用することで、限られた予算の中でも豊かなデザインができることを示すチャレンジでもあった
Question01
受賞作品の最後のピース(ジグソーパズルを仕上げるに例えて)はどこでしたか?
床という低位置に岩石資料を配置する計画のため、資料の保護の仕方が壁となった。結界で囲んだり、ケースを被せることで解決はできても、パンチカーペットの柔らかいイメージの空間の中にカクカクした物体が見えてくることになり、展示の雰囲気を損ねてしまう。コストアップも最小限に抑えねばならなかった。たどり着いたのが、解説グラフィックに新たな機能を与えることだ。岩石の周囲の床面に直接グラフィックを表示することで、岩石と情報を関連付けながら、心理的な結界をつくることを試みた。また世界各地で研究者が足元にある岩石から過去の情報を読み取るという学術研究の姿に重ねる展示体験につながるアイデアにもなったと考えている
Question02
空間デザインの仕事の中で、一番好きなコト、ワクワクするコトは?
新しいプロジェクトに取り組むときに、「なんでもいいから、チャレンジがある提案をする」ことを心がけている。必ずうまくいくとは限らないけれども、自分をワクワクさせてくれる気がするし、発想が鍛えられている感覚にもなれるのがいいなと思う。
Question03
空間デザインの仕事の中で、一番苦労するコトは?
展示づくりがデザインのフィールドだけに、展示のテーマに合わせて知識を深めたうえで、自分なりの伝えたいメッセージの解像度を上げて、提案に入れ込むことを心がけている。例えば今回は岩石の展示だったが、片麻岩や縞状鉄鉱層、ストロマトライトなど、岩石の成り立ちを調べて、地球史の視点で伝えるポイントを整理して、と、検討段階で非常に苦労をした記憶がある。一方で、それでもわからないことは学芸員さんに聞いてみたりと、コミュニケーションにつながり、同じ展示をつくるチームとして気持ちが一つになっていくのを実感できる。ふと、これも展示づくりの魅力かと思わされる。
Question04
クライアントとのやり取りで印象的に残っている言葉や出来事はありますか?
経験を積むことはいいなと思うことが多いが、必ずしも上手くいくとは限らない。全性について不安があり、リスクを回避するために別の見せ方も検討をしていた。そんなときに、「それでも床に置く展示が相応しい。」クライアントのこの言葉が、すべてを最良の案に導いていくこととなる。コンセプトを共有し、一緒につくりあげていくことの大切さを改めて感じた。
Question05
空間デザインで社会に伝えたいコトは?
空間はリアルだったとしても、バーチャルだったとしても、そこを訪れた人の「共感」を生み出したり、「つながり」をつくる可能性を提供できる。だからこそ空間は、未来を動かすコアになると信じている。
Question06
空間デザインの多様性について一言
これまで関わってきた施設のデザインを振り返ってみると、空間デザインをするのだけれど、インテリアデザインからグラフィックデザイン、ロゴマークや運用ツールなどのV.I.デザイン、映像デザイン、体験デザインなど、その場所に関わる多様な要素一つ一つが一体的に見えるようにデザインしていて、そこに空間デザインのおもしろさと可能性を感じている。
Question07
空間デザイナーを目指す人々へのメッセージ
この仕事をしてきたからこそ、思っていることがある。それは日々の生活の中で、「共感」したり、「高い感度」で見る力がついたと感じる機会が多いことだ。ささやかな出来事だとスルーしてしまいそうだけど、色々な視点から見られたり、奥深さを感じたり。いつの間にか暮らしを豊かにしてくれていたんだなと気づかされる。そう考えると、本当におすすめできる素敵な仕事だと思う。
PROFILE

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石河 孝浩
丹青社
筑波大学芸術研究科修了後、株式会社丹青社入社。
文化・交流施設の空間デザインに携わる。
主な受賞作品は、ふじのくに地球環境史ミュージアム 日本空間デザイン賞2016「大賞」「企画研究特別賞」、中央区郷土資料館 日本サインデザイン賞2023「大賞」日本空間デザイン賞「銅賞」、つくばジオミュージアム 日本サインデザイン賞2025「銅賞」 そなエリア東京 日本サインデザイン賞2025「銀賞」「小林章賞」など。





































